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パピーパーティーに見る遺伝的要因と後天的要因

犬の特性と個性

先日のパピーパーティーにボーダーコリー2頭の参加がありました。このパピーは同じ父親でお母さん違い、生まれた日は数週間の違いです。つまり異母兄弟と言うことです。
どちらも完全なるワーキング系の親から産まれたパピーで、見た目はそっくり、行動は基本的によく似ているのですが、すでに違いを強く感じます。果たしてこれは元から違っていたのでしょうか?
子犬の性格や行動をよく遺伝によるものと聞きますが、実際にはどうなのでしょうか?
少し詳しくお話ししたいと思います。

性格は遺伝的先天要因と環境的後天要因が複雑に影響

親犬から子犬への遺伝は、父犬と母犬の両方の遺伝子(DNA)、さらには3世代の遺伝子が影響する部分があります。(子犬のDNAは母犬と父犬からそれぞれ半分づつ受け継ぎます)
見た目(毛色、目の色、大きさなど)や一部の性格、疾患は親から遺伝する可能性がありますが、多くの場合は遺伝子だけでなく環境要因(食事、薬、睡眠、運動、嗜好品、様々なストレス等)も複雑に関与します。また、性別によって性染色体の伝わり方が異なり、男性はX染色体を母犬から、Y染色体を父犬から受け継ぎます。ミトコンドリアDNAは母親からのみ遺伝します。

親から遺伝する事(先天的要因、後から変えることができない部分)

  • 見た目の特徴:毛色、目の色、大きさなどの見た目の特徴は、親から遺伝する形質です。
  • 性格:性格に関わる遺伝子の組み合わせも伝わりますが、環境要因との相互作用によって形成されるため、完全に親犬と同じ性格になることはありません。
  • 疾患リスク:一部の疾患や遺伝性疾患は親から遺伝する可能性がありますが、複雑な環境要因も関与することが多いです。

性別による違い

  • 男の子:母親からX染色体を、父親からY染色体を受け取ります。このため、父親の持つX染色体上の遺伝子の変化は男の子には伝わりません。
  • 女の子:母親と父親の両方からX染色体を1本ずつ受け取ります。そのため、父親の持つX染色体上の遺伝子の変化も女の子には伝わります。

パピーパーティーのボーダーコリーパピー達は父親が同じで母親が違い、それぞれ女の子ですので父親の遺伝子を受けているわけです。つまり母親は違いますが似るわけですね。
しかしながら遺伝子は一つではありません。見た目であっても大きさであってもそれを決める遺伝子は何万種類もあります。
親犬と同じ完璧なコピーは産まれないのはその為です。
特に犬は多産ですから兄弟でも色、柄、サイズなどが違います。
性格も違いますが、ざっくり50%は親犬の遺伝と考えておけばよいのでやはり親犬を実際に見たり触れたり一緒に遊んだりすると将来的に自分が選んだパピーがどうなるかも想像する事ができると思います。

性格で遺伝する事
両親から遺伝される性格に影響を与える遺伝子例がセロトニン分泌に関わる遺伝子です。
セロトニンとは精神を安定させる働きをもつ神経伝達物質です。遺伝的にセロトニンの分泌が少なければ、イライラや不安が拭えないなどの行動、精神の不安定がみられる傾向があり得ます。

犬特有の遺伝しやすい性格

犬は狼から犬へと変わっていく長い歴史の中で遺伝子の受け継ぎも狼とは大きく変わりました。
特に「社会性」や「従順性」は狼とは全く異なる性格に影響を与える遺伝的要因です。
人や複雑な環境に対して警戒心を持たず人とうまくやっていく事、
それがあるから人間と暮らす事ができるのですが、それは半分であり、やはり早期から人間社会にならしていく後天的要因が大きいと言えます。また犬種によっては自立心と警戒心が強く社会化が難しい場合もあります。

遺伝的に受け継ぐ特性/運動能力モーターパターン

犬種はどうして作られた?どういった犬種があるのか?、、、、これを話し始めると筋道から外れてしまうので、ざっくりとですが、ボーダーコリーがボーダーコリーである理由、それが犬種特性、モーターパターンです。
ご存じのとおりボーダーコリーは牧羊犬です。
動くものの前に回り込んでまとめようとする行動は学習からくるものではなく、持って産まれた遺伝的要因です。
アウラはやたらとボーダーコリーやシェルティがやってきますが、そのうちの1/4くらいは牧場で暮らした方がいいかもね?って言うワーキングタイプです。
パピーパーティーに来た2頭のボーダーコリーはまさにそのタイプです。
実際の所、飼い主さんは牧場は持っていませんが、先住犬のボーダーコリーも含めてシープドッグやアジリティを楽しんでいます。
しかしながら遺伝子だけでシープドッグやドッグスポーツを行う事はとてもリスキーです。
やはりそうしたハイスペックのボーダーコリーは人を選びます。
しっかりトレーニングをしてリレーションシップを構築しないとあっという間にスタックしてしまいます。
では、私のウノはどうか?
ウノもボーダーコリーですが、ショータイプ、家庭向きの遺伝子を持った親犬から産まれました。
その為、ワーキングタイプのボーダーコリーとは見た目も動きも全く異なります。
ボーダーコリーを知らない人がワーキングタイプとショータイプの両方を見てどちらもボーダーコリーとは思わないでしょう。
残念ながらウノのようなボーダーコリーはハイスペックではありませんので、牧場に行っても仕事はもらえません。
スピードも遅いし、羊を束ねる能力も極めて弱いので羊に負けます。
ドッグスポーツをやっても高い結果は望みにくいのです。
それでもウノは様々なドッグスポーツで活躍していますので、後天的要因として人ががんばり、リレーションシップ構築をしっかりして、社会化をすればワーキングタイプを超えて活躍する事もできるのです。
運動能力の66%は遺伝要因で決まるとの報告もあるように、自分が犬と何をしたいのか、どう暮らしたいのかを反映できる犬種、タイプを選ぶ事は先々のリスク回避にもなるはずです。

遺伝的に受け継ぐ特性/知能

知能や学習能力の7割は遺伝的要因と言われますが学習環境によっても影響を受けます。
先天的に知能の高い個体や知能の高いと言われるボーダーコリーであっても学習環境が悪ければその能力は発揮できませんが一方で知能が低くても学習環境がよく、人がそれを支援し努力すればボーダーコリー以上の知的行動を得ることができます。
特に犬はその傾向が高く、人次第でなんでもできると言えます。

犬種による特性/病気

病気そのものが遺伝することはありませんが、病気の原因になりやすい要因が遺伝します。
例えばアレルギーが昨今の話題ですが、子犬がアレルギーで産まれてくるわけではありません。
わかりやすく言えば、アトピー性皮膚炎や花粉症、食物アレルギーで産まれてくる子犬はいません。
しかしながら遺伝子にはそうなりやすい要因が含まれていると、後天的要因(環境や経験)の大きさによりアレルギーになります。
昨今のドッグフードで育った親犬、遡ればその親、さらにその親とライフサイクルが短い犬は何世代もの積み上げが良くも悪くもあっという間にできてしまいます。
その為食物アレルギーの要因が遺伝的に受け継がれるリスクは否定できません。
私はこれは食物アレルギーではなく、ドッグフード(添加物)アレルギーだと思っています。
こればかりは繁殖をするブリーダーさんの質によって変わりますので、子犬を選ぶ時に親犬たちが何を食べているのかをしっかり確認することも将来の病気リスク回避につながると思います。

遺伝的に受け継ぐ特性/攻撃性

遺伝的に攻撃性は受け継ぐのですが、それは母犬の胎内での男性ホルモン(テストステロン)の分泌量で決まります。
テストステロンが多く分泌された母親から産まれた子犬はオス型脳になり攻撃性が高くなる傾向があります。
一方で女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンが多く分泌された母親から産まれた子犬はメス型脳になり攻撃性が低くなる傾向があります。
もちろんそれが全ての犬に反映される訳ではなく、オスとメスとでも違います。
こうしたことも親犬を見たり触れたりスキンシップを取って確認をする事ができると攻撃性のリスクを回避できます。
もっともシリアスなブリーダーであればそうした遺伝子を排除したブリーディングをしているので心配はありません。
親犬の状況がわからない保護犬やアブノーマルミックス犬(デザイン犬)はここで述べた全てがリスクとして大きいと言う事を理解して迎える覚悟が必要です。
見た目だけで選ぶ事や、保護犬を育てたいと言う思いだけで知識も経験も環境も整っていなければさらにリスクは高くなるでしょう。

飼い主と犬は似る?
これな間違いなく遺伝的要因ではありませんね!
環境的な要因が100%?
確かにそうなのですが、実は子犬を選ぶ時、あるいは犬種を選ぶ時に自分に似ている犬を選ぶ傾向がある事から似てくると言う説もあります。
また、過去に飼っていて良い経験が記憶されていたり、ご近所で飼っていた犬がとても印象的だったりといった潜在意識が子犬を選ぶポイントになっている為に似てくるとも言われます。
でもアウラの生徒さんと犬を見ていると最初はなぜこの人がこの犬を選んだのか?ミスマッチに思えても、アウラの場合には何年もレッスンに来られる為、だんだん似てきたなぁと思う事がとても多くあります。
それは犬が人に似て行くよりも人が犬に似て行く方が圧倒的に多いです。
余談ですが、先日、生徒さんから、「先生とウノくんはよく似ていますね」と言われました。
それはよく言われますと答えたら、「性格じゃなくて顔が似ている」と!
思わず笑ってしまいましたが、結構嬉しかったです、、、ウノがどう思うかは微妙ですが!
ただ、この顔が似てくると言うのも後天的要因としてあるのも事実なのです。
長くなったのでこの話は次回に回します。

犬格形成は半分半分

あまり結論にはならないですが、先天的要因だけでも後天的要因だけでも性格はできません。
最高のブリーダーさんかり得てもその後の要因が悪ければそれなりになるでしょうし、保護犬であっても最高の環境で育てれば大化けするでしょう。
ただ言えるとすれば全ては人次第と言う事です。
人と暮らす事が楽しく、安心できる住まいと時間がある。
美味しい食事、運動、社会との接点、人と向かう目標、そうしたことが整っていれば犬は問題を起こさないものです。
パピーパーティーでもそんな事を色々な言葉でお伝えしております。
あのボーダーコリーたちどんな風に育って行くのでしょうね!
未来は明るい!


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